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そこへ声を掛けてくれたのは、友人であり、同じ英装術士の一人でもあるシラエ・サナだった。長い髪にヘアバンドをしている。
穏和な顔立ちでウインクをして、缶ジュースを差し出してくれる友人。アヤメも受け取るのだが、俯いたまま飲もうとはしなかった。
「また昔の友人に会ったの?」
「うん……」コクリと頷くアヤメ。
「そう、それでまた逃げられたのね……」
今度もまた成果を上げられなかったのだとわかると、サナは苦笑を浮かべる。
「まあ、仲の良かった同僚が犯罪術士になったって言うのは、確かにショックかもしれないわねえ……」
サナが心中を察するが、このアヤメの沈み具合は少し特殊なように思えた。
「無許可の魔術行使、違法物所持、器物破壊、他にも色々とやってる無所属術士の大逃亡者。ヤタノハ・クシビ」
「あああ~~~。やめてええぇ……!」
アヤメは、聞きたくないとでも言わんばかりに耳を押さえて顔を俯かせた。
かつての自分の同僚が、なぜこんな事に……!
「有名よねえ、あなたの彼氏。なんでああなったの?」
「それは過去の話よ!!」
思わず大声を上げそうになるアヤメ。即座に否定するが、やはり気分は最低だ。
「うう……。私が不甲斐ないばかりに……こんな事に……」
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