第一章

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 再び俯くアヤメ。原因を考えるが、心当たりは見つからない。しかし、自分には責任があるのだ。身近にいたはずの自分には……。 「まあ、そんなに落ち込んでもしょうがないわよ。なってしまったものは、なってしまったものよ」 「そんな楽観的になれるわけ無いでしょう! 自分の親友が違法術士なんて……!」  アヤメが身を乗り出す。そんなアヤメの気持ちを察してみるサナ。 「そうねえ。英装術士の親しかった人間が犯罪者なんて、世間的にもあまり良い話じゃないわねえ」 「うう……」  顔を俯かせるアヤメ。サナの言葉が棘のように突き刺さって痛い。町の平和を守る人間の立場が無い……。 「でも案外気にしても、どうにもならないんじゃない? 違法術士になってしまったのなら、このまま流れに身を任せてみるのも一つの手だと思うけど?」 「いえ、まだよ……。まだ間に合うわ」そんな事を口走るアヤメ。その瞳は熱意に燃えていた。 「いえ、間に合わせてみせる……! 何もかも全てが手遅れになる前に……!」  いつかきっと、クシビを元の優しい人間に――真っ当な人間に戻してみせると。    クシビは、長い道のりを歩き続け、一軒の店の前まで辿り着いていた。 「お帰りなさいませ。クシビ様」 「……ああ」     
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