第一章

9/12

3人が本棚に入れています
本棚に追加
/177ページ
 クシビは出迎えの挨拶をする洋式の使用人の服装に身を包んだ女性に短く返事をすると、そのまま店内へと入っていく。 「なんじゃ、もう帰って来たのか。今回も派手にやられたようじゃのう」  もう一つ、店の奥からそんな声が聞こえてくる。その声に、クシビは白々しい顔を向ける。 「……仕方ないだろう。それと、野良の集団にあんなマルチロイドがあるなんて聞いてなかったんだ。」  「ふむ。シズネ」小さな声が、使用人の女性に指示を出す。 「はい、お嬢様。どうやら専門企業の新製品のようですね。違法に改造した物が野良術士達の間で流通しているようです」 「そうか……中々に厄介な物が出回っておるようじゃの。ならば、少し対策を考えなければな」 「それなら、すでに用意してあります」 「ほほう、それはよい手際じゃのう。さすがは我が使用人じゃ」  まるで自分の功績とでも言わんばかりの幼い声。得意げな表情に磨きが掛かる。  そんな物があるなら、最初から用意しておいてくれと言いたくなる。 「クシビ様、これをどうぞ」 「………」  使用人であるシズネから渡されたのは装脚具だった。見た目は足に着ける防具だが、何かしらの機械魔術が施されており、動力系のマテリアル石が組み込まれている。     
/177ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加