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歩みが止まる。
束の間の静寂が生まれた。
破ったのは俺だ。
「…どういう考えでそんな風に思ったんだか理解に苦しむね。自分を犠牲にして平和を作るなんて英雄じみたことを、どうして魔王の俺がしなきゃなんねえんだよ」
「ふと思っただけです。違うのであればいいんです、あなたはボクの未来の旦那様なんですから、死なれては困ります」
「ケッ、そうなりゃ死んだ方がマシだっつーの」
「約束してください」
声音ががらりと変わったのを聞いて、俺は肩口から視線を背後に投げる。
十メートルもしない向こうに立つ勇者は真剣な面で真っ直ぐに緑の瞳を向けていた。
「人間が心から安心して暮らせる平和な世界にちゃんとあなたも生きていることを、今ここで、ボクと約束してください」
「…ああ?指切りげんまんでもしろってのかよ、アホくさ。だから死なねえって言ってんだろが」
「ボクも約束します」
「話聞いてる?」
一方的に喋り続ける勇者にちょっとイラッとしながらも聞きの姿勢になる俺。
「いつか必ず、ボクはあなたと肩を並べてみせます。いや、越えてみせます。そうすれば、魔王よりも強い勇者がいれば人間たちはきっと安心してくれる……強大な魔王がいなくならなくても、幸せに暮らしていけます」
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