紫色の妖しき剣

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「鍛えると言ってもいろいろあるわけで、ただ強くしてくれと言われても悩んでしまいます。何を伸ばすべきか、何が足りないのか、どう鍛えるべきか。そういうのは実際に目にしてみないことにはわかりません」 体操服に着替える俺は入念に準備運動をしながら口を動かす。だだっ広い中庭の中央にいる俺は屈伸やら体を捻ったりやらしながら向かい合う相手に向けて言葉を続ける。 「つーわけで、実際に俺が戦ってどれほどか見定めようと思います。加減はいらないんで全力でぶつかってきてください、恭子先生」 見据える先。そこには同じく準備運動をするスポーツジャージに身を包んだ恭子先生がいる。 時は放課後。恭子先生の教師としての仕事が少し落ち着いたとのことなので、約束通り俺が直々に恭子先生を鍛えるために中庭を占領した。 すでに中庭全域に魔力で作った結界が張られている。張ったのは勇者だ。恭子先生も勇者パーティーに選ばれるほどの実力の持ち主である以上生半可な結界では学校に被害が出てしまうからな。 「アリメーナの奴も恭子先生の力は認めてたし、俺も全力で行きます」 「でも真代くん、確かシュリンちゃんに魔力を抑えられてるんじゃなかった?」 「『オートオープン』」 胸の前に置いた右手を捻る。それだけで内側からカチンと実体の無い箱が開き、俺の体から大量の魔力が噴き出す。
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