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ゆっくりと漂うリオシスはノームの後ろに浮かぶ青い星を見つめていた。
綺麗な星だ。黒い世界に浮かぶその姿は美しく、そこに生きている生物たちも愉快で面白い。
失いたくない。
失うわけにはいかない。
あの星には自分の大切な世界が広がっている。それを壊させるわけにはいかない。
断じて。絶対に。なんとしてでも。
「……一つ賭けをしようか」
体の方向をノームに合わせたリオシスは言った。
「俺がここから起死回生の大逆転をかますか、お前が俺の世界を壊すか……お前はどっちに賭ける?」
『…人間たちの娯楽で生まれた賭け事か。フン、いいだろう。その勝負に乗ってやる』
人間を象ったノームは魔力体の口を歪めて笑った。
『私は貴様の世界を壊す方に賭けよう』
「だったら俺は大逆転の方だ。賭けに勝てば勝利が獲得出来る。………まぁ、こんな賭けは当事者がするようなもんじゃないんだがな」
『いいではないか。ここには私と貴様しかいない。己の全てを賭ける……これこそギャンブルという物だろう?』
「ハッ…ハハハハ!言われてみればそうか。一発勝負の大博打―――やろうぜ、ノーム」
リオシスの鎧が、腕が、翼が、粉微塵に砕けて消えた。【サタンオーバー】を解除し通常の【黒臨強化】に戻ったリオシスは地球から供給している酸素を取り込み、ゆっくり吐き出して目を瞑った。
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