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(どのみち勝ち目はない。今のままじゃ俺はノームには勝てない)
深呼吸を繰り返す。心と体を落ち着かせ、意識をより内側へと浸透させていく。
ノームは何もしてこない。真っ向から受けて立つという考えなのだろうが、リオシスにはありがたいことだった。
(負ければ全部無くなる。その結果はもう確定なんだ、なら、少しでも勝てる可能性を作らなくちゃならない)
リオシスの指先で黒い粒子が弾ける。
風もないのに逆立った髪が微かに揺れる。
(きっかけは田上っちとの融合……あの感覚を思い出せ。失敗したら終わる…負けても同じことだ。勝ち目がないなら、どうやっても終わる未来しかないんなら、もう俺には"これ"しかないッ…!)
指先が歪む。その歪みは次第に広がっていき、腕から胴体に分かれ頭部や足にも同様の変化が起きていく。
『―――』
ノームの魔力が震えた。その震えはもちろんノームも気づいている。だってノーム自身が震えたのだから。
見る見るうちに変化していく。
姿が…肉体がという外面的な物ではない。
リオシス・サドゥン・アスモヴェリンという一人の悪魔の存在が、根本的な性質その物が変化していく。
(あとでどうなってもいい!二度と魔力が使えなくても、元に戻らなくても構わないッ!だからッ―――)
閉じていた瞼を一気に開く。
遮蔽物が取り払われる。
「―――絶対に勝つんだ!!!」
金色の光が―――宇宙の闇を切り裂いた。
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