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ふざけるのもここまで。今は戦闘の最中なのだから遊んでいる場合ではない。
けれど、それはふざけてみせるほどに余裕があるということでもある。勝機はないとまで思われていた今までとは違うからの余裕。
心の変化はリオシスだけでなく、当然ノームにもあった。
魔力のベールに包まれたリオシスの表情も姿も確認出来ないが些細なことだ。最早姿などどうでもいい。
得体の知れない力を体現した敵。それだけわかれば十分だった。
『貴様は排除する―――貴様の存在はあってはならんのだからな!!』
今までの比ではない魔力の波動が巨大な掌から放たれた。地球に広がる大陸の一つや二つ消し飛ばせるほどの尋常ではない破壊の光がリオシスへ迫り、消し飛ばしにかかる。
対するリオシスはというと……、
「……………"そこか"」
呟いた。
光が来た。
着弾する。だが想定したタイミングよりも速かった。リオシス自身が自ら前に出たからだ。
―――そして、オレンジの光を、金と黒の二色が貫き線を引いた。
魔力波も、腕も、胴体も貫いてノームの背後に移動したリオシスは大事そうに両手で抱えたそれを見下ろす。
「これでもう大丈夫だ、会長」
薄い緑色をした光の球体。バレーボールほどの大きさのそれは、綾坂天乃の魔力全てだ。
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