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「記念すべき第一号だ。しっかり噛み締めてくれよ」
魔力の塊を左の掌に乗せたまま漆黒に染まった右手を突き出す。金色の衣服がその拍子に柔らかく弾んだ。
「あの世で天使に言っとけ。次に手ぇ出したらお前らも消すってな」
黒い眼球に浮かぶ金の瞳が煌めく。
金髪が揺れる。
右手から―――目映い光が放たれる。
「【ラストゴールド】」
金一色が空間を塗り潰した。
阻む全てを壊し、邪魔な全てを喰らい、憎き敵を消すために。
(………やはりダメか)
放出したあとに残った残骸が声に出さず言った。最早形も保てない、意思を持った光の結晶体となってしまったノームの核だ。
(認めてしまったのが敗因だ……それに、諦めてしまった。貴様に勝てないのなら"あやつ"にも勝てはしない事実を受け入れてしまったから)
土の魔力を属性の判別が出来ない新たな魔力が粉砕して迫る。核となってしまっては、もう何も出来はしない。
(はっ……精霊失格だな、私は…)
終わりを待つしかない。
「ご苦労様、ノーム」
でも、待っていたのはこんな終わりでは断じてなかった。
(きッ、貴様はッッ!!!??)
美しい金が迫る中、ノームの核はそっと手で摘ままれる。細く、病的なまでに白い指に。
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