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地球の生物は宇宙空間ではろくに生命を維持出来ないという常識を覆すのは、生物という概念を超越した存在。
生物として生まれ落ちていながらその枠組みに収まりきらない極大の異物。
「ようやく完成したわ。あの子はついに到達した、わたくしと同じ場所に」
(………、この女、まさか知っていたのか…)
大きく開かれた口。綺麗な歯並び、艶かしくも不気味な舌が真下で待っている。
(魔王がこうなることを、この女は予期していたのか…?だとしたらこの女の目的はッ…!!)
宇宙よりも暗い喉の奥に、ノームは吸い込まれて落ちていく。
「お仲間と一緒だから寂しくないわよね?土の精霊ノーム」
金色の魔力が吹き抜ける―――その前に。
核を喰らい、飲み込み、消える。さも魔力によって消滅したかのように見せ、少女は姿を消す。
リオシスは知らない。
だがいずれ知ることになる。
これは確定的な未来。
自分の後ろにずっと寄り添い、首に手をかける怪物の存在と向き合うことになるのは、逃れられない現実。
魔王リオシスは完成した。
少女の思い描く理想へ辿り着いた。
完璧な勝利を手にしたとぬか喜びする少年の傍らで、すぐ隣で、彼女は静かにほくそ笑む。
嬉しそうに。楽しそうに。幸せそうに―――。
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