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見てもいないのにはっきりと言い切るケノンに眉を寄せる俺。にかわには信じられないが、ケノンの目には一切の迷いがない。心の底から言っているのがわかった。
「魔王、今彼らと敵対しても意味はありません。ボクらの敵がたった一人で、相手の脅威がわからない現状を見れば彼らの情報は必要不可欠です」
「………」
「世界の監視役である彼らならボクらよりも相手を見つけられるでしょう。だから堪えてください、一時の感情で世界が滅んでしまってはどうしようもありません」
「………チッ、お前に説得されるとイラッとするぜ」
「それでも納得してくれたようで何よりです」
笑顔を向けてくる勇者から顔を逸らし、右腕の魔力を引っ込める。ケノンの言い分、勇者の言い分は的を射ている。精霊たちの一番の脅威である"そいつ"の正体が何一つわかっていない以上、最も有力な精霊をここで消すのは後々大きく響くことになる。
「わかってくれたようでよかったぜ」
「で、お前は何しに来たんだよケノン」
「正直に言うと単なる顔合わせさ。一回会ってるけどあん時は敵同士だったからな、味方としてもう一回くらい会っておこうと思ってよ。それに、久奈ちゃんが話そうとしていた話ってのも俺のことだと思うしな」
「……そうなのか?ヤーちゃん」
「ぁ…は、はい…ケノンさんは私が気になるとかで、しばらくは一緒にいて様子を見たいとのことで…」
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