周回遅れ

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どうしたものかと悩んでいる俺を見て、恭子先生が先に口を開いた。 「魔王の真代くんや勇者のレアティアさんが本当のことを言わなかったのは、きっと私たち一般の人たちには到底理解出来ない何かがあったんだと思う。それくらいなら私もわかったわ」 悩む俺の姿に何かを感じたのだろう、自分の心情を語り出す恭子先生を真っ直ぐ見た。 先生は変わらない。話を始めてからずっと俺を見つめている。 「話さないのはそれだけの理由があるんだってこともわかった。けど、私は知りたいの」 「どうしてですか?」 「私があなたたちの先生だからよ」 「………」 「今の私じゃあなたやレアティアさんの足元にも及ばない。けど私は教師であなたたちは生徒。生徒を守るのが教師であり、私の責務なの」 恭子先生の言葉には確固たる決意と力があった。揺るがない一本の芯があるとはっきりわかった。 「今のままじゃダメなのよ、私は。生徒たちの悩みを知って、助けられるような教師になりたいの。魔王も勇者も関係ない、真代くんもレアティアさんも私の大事な生徒だから、私が守らないといけない……だから真代くん、今の私に話せないのなら、一つ頼みを聞いてちょうだい」 「……頼み、ですか?」 コクリと頷く。 そして言った。 「―――私を鍛えてもらえないかしら?」
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