周回遅れ

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こいつは俺が魔王だということを知っても大して驚きはしなかったようだ。当初目をつけた俺の回復魔法もそうだが、魔物をよく思っていたり魔界をちょくちょく気にするところからなんとなく俺が魔物なんじゃないかと疑っていたらしい。それでも魔王だとは夢にも思わなかったと、電話で話した時に陽気に笑っていたが。 「さぁ中へどうぞ。今日は臨時で休みにしているから一般社員は誰もいないよ」 「無茶言って悪いな。ホント感謝してるよ」 「何言ってるんだい、僕とキミの仲じゃないか。キミが手配した料理はもうじき来るだろうから、それまでゆっくりしててよ」 海柳に案内されながら研究所の中を進む。初めて来た人たちは周りをキョロキョロしながら俺のあとに続き、研究所内にある会議室に到着。どうやらここを使わせてもらえるようだな。 「真代くんたちが来たよ」 ドアを開けるなり海柳が誰かに言った。社員の人たちは休みのはずでは?と思いながら海柳のあとに俺も入ると、そこに一人の男が立っていた。 海柳と同じく白衣を来ている白髪混じりの男。海柳と同年代らしきその男を見て、俺は目を丸くしてしまう。 「あれっ、お前は…」 「久し振りだな真代くん。いや、魔王と呼ぶ方がいいか?」 生気のない瞳は変わらない。彼は俺を見るなり無表情でそう言って、俺以外のみんなの内ヤーちゃんだけが反応した。
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