彼女の家には

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もう今となっては炬燵などというものは存在しないのか。 『こたつでみかん』は昭和の遺産なのだろうか。 「いらっしゃい、お父さん。上がって」 数ヵ月前嫁いだ娘の新居にお邪魔した私は、なんとなくもの寂しくあった。 床暖房。エアコン。 そうだな。そうなるよな。 畳の部屋も一応あるにはあるが、基本フローリングだ。 スリッパなんてうちではトイレくらいしかなかったものな。 「お邪魔するよ」 通された居間にもそれはなく、木のテーブルと絨毯、いや今はラグマットというのか。 「ゆっくりしていってください」 「ああ、ありがとう」 義理の息子、娘の旦那。 この家の主(アルジ)。 すっかり奥さんになったんだな。あの小さくてピイピイ泣いてた女の子が。 男手ひとつで育てた娘は、幸せそうに忙しそうにテーブルにおもてなしの品を運ぶ。 「寒くないですか?一応、人にセンサーで反応して暖めてくれるらしいですよ」 最近のエアコンというのはすごい機能だ。 君の力じゃないよ。 と心の中で呟いた。
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