ブチ

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思わず脚をこたつから引き抜いた。 「お前、今中に居なかったか?」 ブチは、くぁあ、とアクビをして毛づくろいをした。 何かの勘違いか。 こたつ布団の感触だったのだろうか。 箸を突っ込んだままの鍋に笑いが出て、またこたつに足を入れた。 ……いる。 確かにこたつの中に、猫、いや、毛のある生き物がいる。 ぶよんとした弾力に、靴下越しにもわかる毛のある動物だ。大きさはブチ位で── だが、目線を後ろにやるとブチは確かにそこにいて、呑気に舌で毛並みを整えているのだ。 ドアは開けているどころか施錠もきっちりしている。窓もそうだ。 外から他の猫や動物が入ってきて、ましてや気付かないうちにこたつに潜り込む道理がない。 そこまで思って、やっと底知れない気味の悪さを感じた。
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