ブチ

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手も体も動かなくて、俺はしばらく呆然としていた。 多分、時間にしたら一分くらい。 ブチがフラフラしながらこたつから這い出してきた。 耳が片方無くなっていた。 毛並みをはぐしゃぐしゃになって、赤黒い血で身体は濡れていた。 「ブチ…」 ブチは力なく俺の膝に、道端で出会った時みたく擦り寄って来た。 「ブチ、ごめん、ブチ…」 焦点の合わない瞳で俺を見上げた後、ブチはゆっくり目を閉じた。 呼吸をしなくなったブチを膝に抱いていると、こたつ布団越しに、しっかり声が聞こえた。 「オイシカッタヨ」 以来俺は、こたつが怖くて使えない。
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