大掃除

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大掃除

 友達が借りているアパートの部屋は、とにかく壁が汚かった。  そいつ自身はどちらかというと綺麗好きで、いつ部屋を訪ねても室内は整然としている。だから余計壁の薄汚さが気になるのだ。  壁の掃除はしないのかと聞いてみても、それなりにはやってると言うばかりで、多分友達も、ここまで汚れてしまった壁を徹底的に綺麗にすることを諦めているんだろう。  そう思っていたが、先日、借りてた品を返そうと友達の部屋に立ち寄ったら、汚れきっていた壁がピカピカになっていた。  あんなに染みが浮きまくっていたのに、まるで新品だ。  いったいどんな掃除の仕方をすればこんなに綺麗になるのか。もしや、壁紙を貼り替えたのか?  気になって気になって質問をしまくったが、友達はのらくらとかすばかりだ。それでも俺は引きさがらず、ひたすら壁を綺麗にした方法を問うと、ついに根負けしたらしく、友達は何やら中身の入った黒いビニール袋を持って来た。  促されて中を見ると、そこには何やら紙切れがたくさん入れられていた。  何かと思い、手に取ろうとしたら、決して触るなと袋を閉じる。  掃除のために劇薬でも使用したのだろうか。そう考えた俺に、友達は袋の中身を、霊媒師に用意してもらったお札だと言った。  友達の部屋の壁はただの汚れではなく、壁に付着した不幽霊だった。  部屋は事故物件で、家賃は驚きの値段だが、壁に地縛霊が憑りついていて、そいつが辺り一帯の浮遊霊を引き寄せ、染みという形でそれが壁に浮き出るというのだ。  他におかしな現象はないが、やはり気味が悪いので引っ越すべきかどうか悩み、ダメモトで名の知れた霊媒師に相談してみたところ、年に一度、お札に霊を吸わせて供養のために持って来いと言われた、とのことだった。 「大学を卒業したら引っ越すつもりだけど、それまでは、金銭的なこと考えると、これで凌ごうかなって」  苦笑いを浮かべながら、友達がビニール袋の口を閉ざす。それを見ながら、俺は、幽霊もまとめて大掃除ができるんだなとぼんやり思った。 大掃除…完
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