コタツの中とコタツの外

2/6
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
やっとの思いで着いた美也子を、衝撃の光景が待ち受けていた。     「あ、美也子やっと来た。遅いよ~」     合コン主催者の友人、志乃が美也子を見つけてコタツの中から手を振る。     コタツの中から。     店の中に一歩入ると、もうそこはコタツ、コタツ、コタツ……テーブルと椅子があるべき場所は、全てコタツで埋まっていた。コタツの中央にはご丁寧にミカンが置いてある。客はコタツに入った状態でコーヒーやオムライスなどの洋風の料理を食べているものだから、何とも不可思議な景色である。     「ごめんね、電車が遅延してて……それより何?ここ」 「知らないの?最近話題のコタツカフェ」 「コタツカフェ?」   志乃はどことなく自慢げに言った。     「そう、コタツに入ってあったかいままご飯食べたら、自然と仲良くなるじゃない。コタツってすごく合コン向きだと思うのよね。知らない人ばっかりでもコタツに入れば話が弾むし。さ、美也子も入って、自己紹介始めよ」     言われるままにコタツに入る。確かに暖かかった。しばらく忘れていた温もりだった。ほうっと気が抜けていくのを感じる。美也子の家にはコタツが無かったから、ほぼ生まれて初めてのコタツであった。 と、足先にちょん、と誰かの足が触れる。美也子は驚いて顔を上げた。     「もしかして、美也子か……?」   間違えるはずもない。前の彼氏が、美也子以上の驚きを顔に浮かべて、美也子を見つめていた。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!