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ここで突然だが、コタツの中に視点を移してみよう。コタツの上は、言わば表舞台。コタツの中は、表舞台に立つことの出来ない者たちが、密かに集う舞台袖である。コタツの中には何がある?程よく温まった空気と、たくさんの人の足だ。
祐希と美也子が互いに気づく少し前、足たちは一足先に再会を果たしていた。
「まあ祐希さん?お久しぶり」
「あっもしかして美也子?何年ぶりだろうなあ、また会えて嬉しいよ」
二人の足はまた会えたことを喜びあった。足の持ち主同士が喧嘩していても、足たちには関係の無い話である。持ち主たち同様、足たちも恋人同士であった。足が恋人だって?笑ってはいけない。足にも足なりの営みがあるのだ。
「元気だった?あれから一度も会うことはなかったけれど」
「心配するほどのことはないさ。あるとすれば、上のふたりの仲だけだ。今ここで元の縁を取り戻さなくては、俺らは永遠に会えなくなってしまう」
「それは困るわ。何とかして元のように仲良しカップルに戻さないと。そう、私たちのように」
「そうだな、俺たちのように。そういや今日の黒ストッキング、よく似合ってる」
「やだ。祐希さんこそ、その青い靴下とっても素敵」
足のバカップルも大概人間と似たようなものである。
「あっ、話が逸れたわね。どうしましょう」
「うーん。どうしたらいいんだろう」
足たちは考え込んだ。
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