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コタツの中とコタツの外
美也子は急いでいた。合コンに遅れそうだからである。
美也子が合コンに参加するのは実に六年ぶりだった。前の彼氏とこっぴどい別れ方をしてからは、恋愛のほうはとんとご無沙汰だったのである。しかし、冬も本格的になってきて、一人ぼっちのクリスマスの寂しさを覚えた美也子は考えた。よし、合コンに行こう。単純に言うと、美也子は男に飢え始めていたのである。同じ学部に通っている友人が企画してくれて、大学の近くにあるというカフェでの合コンが決定した。
美也子の第一関門はまず服選びだった。男ウケしそうな服はほとんどない。彼氏を思い出すのが嫌で、付き合っていた頃来ていた服は捨ててしまったのだ。唯一見つけた薄い桃色のロングスカートに、赤いニットで折り合いをつける。アクセサリーも少し。イヤリングが見えるように、髪は少し高めのポニーテールにまとめた。もちろん化粧もしっかりと、かつナチュラルに見えるように。
そして第二関門は合コン会場となるカフェへの道のりである。休日である今日は親子連れが電車内に溢れていて、美也子は幾度となくスカートの裾を踏まれかけた。極めつけは、人身事故があり最大十分の遅れが発生しているというアナウンス。もう既にギリギリの時間だった。服や化粧に時間をかけすぎたのだ。美也子はがっくりと首を落とした。
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