貧乏なコタツムリ

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 …――俺の財布の中身は寒い。寒すぎる。  貧乏とは俺を表現する為に存在しているような言葉だ。  そんな寒い日にコタツムリ。  最高ッ!  とか言ったのはどこのどいつだ。コタツの中に突っ込んだ足の指をワニワニと忙しなく動かす。確かにコタツに入っていないと寒くて寒くてやってられない。しかしながらコタツに入ったところで気休め程度にしかならない。たとえるならば南極でホット缶コーヒーを飲みつつホッカイロを揉んでいるようなものだ。  もちろんバッキバキのブリザードの中。  そのまま凍死するな。  間違いなく。  日当たりが悪く昼でも暗い部屋で一人考える。寒いな。寒すぎると。そうして明かりもつけずにコタツの中で横になり天井を見つめて深いため息。やはり財布の中身が寒いヤツにはコタツムリすら許されてないらしい。  もちろん懐の寒さに震えているわけじゃない。  観念的な寒さというよりも、物理的に寒くて凍えているのだ。  吐く息も白い。  外ではこれ見よがしに雪が舞っている。  テレビや家具なども売ってしまって残されたのはコタツだけ。今日の夕飯はパンのミミに醤油を数滴垂らしたものをふたきれだろう。腹減ったな。寒いな。空腹と寒さでコタツの中で寝返りをうつ。また足の指をワニワニと忙しなく動かす。  そんな寒い日にコタツムリ。  最高ッ!  …――とか言ったのはどこのどいつだ。  電気が止められてコタツもつけられないんだよッ!  貧乏は辛いぜよ。  トホホ。
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