3 幼馴染み

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 くまさんお手製の夏野菜カレーは、とびきり辛くて絶品だった。  ふたりでフウフウ言いながら食べた後、コーヒーを入れてシュークリームをいただく。 「そういえば夕方、要くんが来たよ」  口についたクリームを拭いながら発したくまさんの言葉に、一夏の身体は固まった。 「……要が?」 「うん。朝から出かけてるって言ったら、『また来ます』って」 「……そっか、」  浮かない顔をした一夏に、くまさんが首を傾げた。 「どうした?要くんと喧嘩でもしたのか?」 「……いや、……なんで?」 「最近あんまりつるんでないな、と思って。ほら、昔は兄弟みたいにいつもいっしょだったからさ」 「もう、そういう年じゃないから」  自分でも驚くくらい、冷たい声が出た。  目をぱちくりさせたくまさんに、あ、ごめん、とつぶやく。 「……ちょっと出てくる」 「ああ。これ持っていきな」  残りのシュークリームが入った箱を手渡された。 「要くん、きっと喜ぶよ」  にっこりと微笑むくまさんに黙って頷いてから、家を飛び出した。   要の家は徒歩で五分もかからない近所だ。インターホンを鳴らすと照明が灯り、すこしの間の後に静かにドアが開いた。  要の大きくて澄んだ瞳が、一夏を見つめる。 「……くまさんが、さっき来たって」  いざ面と向かうと、身体がこわばってなにを話していいのか分からなくなる。手に持った箱を無骨に差し出すと、要の表情がふっと、やわらかくなった。 「……ありがとう。入れよ」 「ああ」  慣れ親しんだ家に入り、リビングのソファに座った。 「貴和子さんは?」 「出張で東京。今夜は紗佳さんと飲み歩くってさ」 「女ふたりで弾けてそうだな」  貴和子さんは、要の母親だ。幼い頃に要の両親は離婚していて、父親はいない。今夜要は家に一人だということになる。
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