3 幼馴染み

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 家が近所で同じ保育園に通っていた一夏と要は、物心ついた時にはすでに親友だった。母親同士も仲良しで、お互いシングルマザーの家庭と、境遇も似かよっている。 やんちゃで泣き虫な一夏と、利発で大人びた要は、なぜかとても気が合った。一夏にとって、要はいつでも優しく見守ってくれる兄のような存在だった。  幼い頃の一夏は、自分の霊能力をうまくコントロールすることができず、霊障に襲われることがしばしばだった。  突然火の玉のような霊に襲われたり、恐ろしい顔の霊に引っ張られる。そんなことが起こると、身体の震えが止まらなくなり、悪夢にうなされた。ひどい時には高熱を出すことさえあった。  そんな時、いつも側で見守り、助けてくれたのが、要だった。  霊が見えているわけではないらしいが、一夏の異変を誰よりもすばやく察知し、闇の世界に引き込まれないようにしっかりと手を繋いでくれる。震えが止まらないときは、ずっと抱きしめていてくれた。  どんなに恐ろしい目に遭っても、要の腕に抱きしめられたら、一夏の心は落ち着きを取り戻した。 「大丈夫。大丈夫だから」  赤ん坊をあやすように背中を撫でながら、やさしく囁く要の声を聞いているだけで、あたたかな光につつまれる気がした。要がそばに居てくれさえすれば、自分は大丈夫だ。ずっとそう思って生きてきた。   ずっとそのままだったらよかったのに、と一夏は思う。  要のやさしさに甘えて、すがって、無邪気に笑う子どものままでいられたなら。     
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