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中学生になった頃からだ。
それまでずっと手を繋いだり、抱きしめてくれていた要の手が、突然一夏に触れなくなった。
微妙な距離を保って離された身体は、もう二度と一夏を包んではくれなかった。
一夏は、要の手が好きだった。要の手のひらはあたたかくて、何よりも自分を安心させてくれる、一夏にとって特別なものだった。
初めは嫌われたのかと思った。いつも甘えて縋ってばかりいたから、見放されたのだと。
しかし、一夏に触れなくなったということ以外、要はなにも変わらなかった。一夏の一番の親友であり、いつも側にいてやさしいまなざしで見守っていてくれる。
もう子どもではない。中学生になったのだから、要が抱きしめてくれなくても、側にいてくれるだけでも大丈夫だと、そう自分に言い聞かせて、どうしようもない淋しさを紛らわしていた。
そんなある日のことだった。一夏が見たある光景が、その後の要との関係を大きく変えることとなる。
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