3 幼馴染み

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 どのくらい眠っていたのだろう。目が覚めると、部屋は照明が消されて薄暗い。それでもほのかに明るかったのは、その日が満月だったからだ。  薄目を開いて要の姿を探す。要は、窓辺に立っていた。じっと、手のなかのなにかを見つめている。チェーンに月の光がきらめいて、それがいつも要が身につけている指輪だと分かった。  中学に上がり、一夏と微妙な距離を取り始めたちょうどその頃から、要は首に銀色のチェーンをつけ始めた。さすがに学校では外しているらしいが、家にいるときや休日にはいつも身につけている。    初めは、お洒落にでも目覚めたのかと思った。しかし要は、銀細工が趣味であるにも関わらず、自分自身はまったくアクセサリーを身につけない。なぜ今頃と不思議に思い、訊ねたことがあった。 「ああ、これ」  胸元から出したのは、銀の指輪だった。要が作るような豪奢なものではなく、とてもシンプルなリングだった。 「お守りみたいなもの」  そう言って、一夏によく見せもせず、ふたたび胸元に隠してしまう。 「ちゃんと見せろよ」  そうねだってみたが、要は首を横に振って、応じない。一夏の願いならたいていのことは聞いてくれる要が、その時は頑固だった。なんとなくそれ以上追求してはいけない気がして、一夏もそれ以来訊かずにおいた。
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