4 二度目の日曜日

2/3
340人が本棚に入れています
本棚に追加
/63ページ
 デザートにジャージー牛乳のソフトクリームを食べ、一夏は満腹だった。  ふたり並んで、草原に寝そべって風に吹かれる。  槙が手を伸ばしてきて、一夏の指に触れる。一夏は振り払わず、槙にゆだねた。  槙の手は意外なくらいあたたかかった。そのぬくもりに、要が握りしめてくれた手のあたたかさを思い出して、また心が突き刺されたような痛みを感じた。 「……なあ一夏、」 「……なに、」 「もし本当に相沢に好きなやつがいるとしても、きみの気持ちは伝えるべきだ」 「……」 「そんな思いつめた顔をしてるなら、すっきりしたほうが楽だって事。……これは、ぼくの経験上、断言できる」  手に触れたら、心まで読まれてしまうのだろうか。槙の言葉に、一夏は大きく息を吐いた。 「槙はさ、」 「なに、」 「どうして自殺なんかしたんだ?」  一夏の問いに、槙は苦笑した。 「いきなり直球投げてきたな」 「……ごめん、でも聞きたい」 「……言わない」 「……そっか、」 「口に出したくないし、思い出したくもない。……それにさ、」 「……なに?」 「いま、一夏と楽しく過ごしてる。……だから、もういいんだ」 「……」 「ぼくは、一夏といるのが楽しい。……楽しくて、すこし欲張りになってる」  槙の横顔を見つめる。子どもみたいに、無邪気な顔で笑っていた。 「欲張り?」 「そう。なあ一夏、八月の日曜日を、ぼくにくれないか?」  まっすぐな瞳が、一夏を見つめ返した。 「この夏休みの間だけ。終わったらもう、ぼくは消えてしまうから」
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!