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「二週続けて外出なんて、さてはデートかい?」
酔っぱらったくまさんの質問に、自分の顔が一瞬でこわばったのを感じた。
「違うよ。友達と遊んだだけ」
「いいなあ。青春まっさかりって感じで」
「だから、違うってば」
「一夏、」
言葉を遮るように、要が皿を寄越す。渡された大きな取り皿には、テーブルの品が綺麗に盛りつけられていた。
「……ありがとう」
「腹減っただろ。早く食べろ」
それだけ言って、要は缶ビールをぐいっと飲んだ。
「……要、酒嫌いじゃなかったっけ」
「嫌いだけど、今夜は飲みたい気分」
そう言って、要は黙々とビールを飲み続ける。いつもより口数が少ないし、なんとなく機嫌が悪そうな雰囲気が漂っていて、それ以上会話は続かなかった。
「一夏、なによ。久しぶりに母さんに会ったってのに、浮かない顔して」
隣に寄ってきた紗佳に、頭をばしりと叩かれた。もう完全に出来上がっているらしく、目が据わっている。
「おかえり。久しぶり」
「元気だった? ちょっと痩せたんじゃない? ちゃんと食べてた?」
「痩せてないし、くまさんがおいしい料理作ってくれるから、たくさん食べてるよ」
「男ふたりで楽しんじゃってるらしいじゃない」
そう言って、紗佳が口を尖らせる。
「仲悪くて困るよりは、いいだろ」
「それはそうだけど、なんだか淋しいというか、うらやましいというか」
まあ、楽しければいっか。そう言うと、千鳥足でもとの席に戻っていった。
ふと隣を見ると、要がいなくなっている。トイレにでも行ったのかと思い、しばらく黙って食べていたが、一向に戻ってくる気配がない。
「要は?」
向かいの席のくまさんに訊ねたら、床を指さした。
「え?」
「ここ。酔いつぶれたらしい」
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