5 くちづけ

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「二週続けて外出なんて、さてはデートかい?」  酔っぱらったくまさんの質問に、自分の顔が一瞬でこわばったのを感じた。 「違うよ。友達と遊んだだけ」 「いいなあ。青春まっさかりって感じで」 「だから、違うってば」 「一夏、」  言葉を遮るように、要が皿を寄越す。渡された大きな取り皿には、テーブルの品が綺麗に盛りつけられていた。 「……ありがとう」 「腹減っただろ。早く食べろ」  それだけ言って、要は缶ビールをぐいっと飲んだ。 「……要、酒嫌いじゃなかったっけ」 「嫌いだけど、今夜は飲みたい気分」  そう言って、要は黙々とビールを飲み続ける。いつもより口数が少ないし、なんとなく機嫌が悪そうな雰囲気が漂っていて、それ以上会話は続かなかった。 「一夏、なによ。久しぶりに母さんに会ったってのに、浮かない顔して」  隣に寄ってきた紗佳に、頭をばしりと叩かれた。もう完全に出来上がっているらしく、目が据わっている。 「おかえり。久しぶり」 「元気だった? ちょっと痩せたんじゃない? ちゃんと食べてた?」 「痩せてないし、くまさんがおいしい料理作ってくれるから、たくさん食べてるよ」 「男ふたりで楽しんじゃってるらしいじゃない」  そう言って、紗佳が口を尖らせる。 「仲悪くて困るよりは、いいだろ」 「それはそうだけど、なんだか淋しいというか、うらやましいというか」  まあ、楽しければいっか。そう言うと、千鳥足でもとの席に戻っていった。  ふと隣を見ると、要がいなくなっている。トイレにでも行ったのかと思い、しばらく黙って食べていたが、一向に戻ってくる気配がない。 「要は?」  向かいの席のくまさんに訊ねたら、床を指さした。 「え?」 「ここ。酔いつぶれたらしい」
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