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7 指輪の秘密
八月も後半に入った。それでもまだ、一夏はあの時と紗佳の言葉とビジョンの意味を掴めずにいる。
紗佳の言うように、槙に抑圧された感情があるのだとすれば、槙の口から死の真相を語ってもらうしかない。そう分かってはいても、一夏はそれを訊ねることができなかった。
日曜日の約束は、続いていた。プラネタリウムや動物園、海水浴。出かける先々で、おいしいものをご馳走になっている。
槙はいつも冗談を言い、よく笑った。心から楽しみたいと願っている彼に、『口に出したくないし、思い出したくもない』ほどのつらい記憶を思い出させることは、槙を傷つける行為としか思えないのだ。
それでも、何とかしなければという思いは消えたわけではない。もし本当に、槙を光の世界に送ることが一夏にしかできないのであれば、それは自分が負うべき責任だと、覚悟が決まっている。
八月の日曜日はあと二回。もう、時間がない。
銀の指輪のあのビジョンは、いったいなにを意味しているのだろう。
真っ先に思い浮かんだのは、要の指輪だ。
近くで見たことがないから分からないが、ビジョンの指輪も要が身につけているのと同じような、シンプルなつくりのものだった。
要。銀の指輪。槙を光へと導くこと。
なぜかそれらが、まったくの無関係に思えないのだ。なにか大切な繋がりやメッセージがそこに隠されているような気がずっとしていて、それは確信に近かった。
要に指輪のことを訊ねる。それ以外に、この謎を解く鍵は見つからない気がした。
要に訊くのは、正直怖い。しかし一方で、本人の口から聞くことができれば、長い間心に溜まったままの苦しい感情にも、なんらかのけりがつく気がした。
「……覚悟、決めよう」
そう自分に言い聞かせて、一夏は要の家へと向かった。
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