7 指輪の秘密

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「一夏くんは、要のことを大切に思ってくれているのでしょう」  真っ直ぐな瞳が、一夏を見つめる。その言葉が意味していることを悟って、一夏ははっと息を呑んだ。 「貴和子さん、俺……」 「幼い頃からずっとあなたたちを見てきたから、分かってる」 「……」  なにをどう伝えればいいか分からなくて口ごもる一夏の手を、貴和子がやさしく握りしめる。  この人に、嘘はつきたくない。そう思ったから、覚悟を決めた。 「……好きです。ごめんなさい」 「どうして謝るの? ひとを好きになることは、悪いことではないでしょう?」 「だって俺は、」 「要のことを好きでいてくれて、本当にありがとう」  一夏の言葉を遮って、貴和子さんはきっぱりと言い放った。その言葉の力強さに、胸を打たれる。あたたかくて、強くて、泣きそうになった。視界がたちまちにぼやけて、堪らず俯く。 「私は一夏くんに感謝してる。だから、これからも真っ直ぐな気持ちでいてね」 「……」  涙がぽとぽとと、床に零れ落ちた。 「根暗で引きこもりで本っ当に面倒な子だけど、これからも要のこと、よろしくね」  おどけた声で笑う貴和子さんに、涙を拭いながら、「はい」と何度も頷いた。  貴和子さんに指輪のお礼を言ってから、要の家を後にした。  帰宅してすぐにシャワーを浴び、友人と飲みに出かけたくまさんが用意してくれた夕食を食べて、早々に部屋へと引き上げる。ベッドに寝転がり、指輪を手に取って見つめた。  槙への贈り物として作ったこの指輪と同じものを、要が握りしめて生まれた。  この事実が意味するところは、まだ一夏には分からない。ただ、指輪を槙に贈ることは間違ってはいないと確信している。  まるでRPGの世界に迷い込んだようだと、一夏は思う。  頭がパンクしそうなくらい、さまざまな思いが駆けめぐっている。  それでも、立ち止まってはいられない。どうしたって、槙を光の世界に導きたい。  槙が無事に成仏することができたなら。  その時は、なにもかも要に話そう。槙とのことも、要への想いも、なにもかも。  そう心に決めて、一夏は指輪を強く握りしめた。
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