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私は目を疑った。
いや、見間違いかもしれない…だってそんなはずがない。
私は手に取っていたノートを棚に戻し、そっと様子を窺った。
私の視線の先にいるのはーーー同じクラスの、柳沢瑠美子ちゃんだ。
色の抜けたさらさらストレートの髪。
制服からスラリと伸びた手足。
どこか憂いを帯びた瞳。
それは、誰もが羨む完璧な美少女…。
彼女は、その先端まで綺麗な指で、ペンを選別しているようだった。
トン、トン、トン……
一つ一つ何かを確認するように、指先でペンに触れていく。
と、そこで指の動きが止まった。
ある一本のペンが、彼女の心に留まったようだ。
赤いペンを一本、彼女は引き抜いた。
細く長い指でそのペンを転がし、品定めするように見る。
そして、彼女はペンを握りーーーーーその手をスルリとブレザーのポケットに落とした。
…やっぱり。
ドクン、と心臓が脈打った。
にわかに息が浅くなる。
私は、彼女がそのまま文房具屋を後にするのを尻目に、その背中を追いかけて走り出した。
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