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橋本妙子の回想
◇
小学四年生の春の遠足のバスの中で私は水野明美さんと席が隣同士になった。
私にとっては絶好のチャンスだった。この機会に水野さんと絶対に友達になるんだ。
それまで私には親しい友達が一人もいなかった。
私が何にでも消極的だったせいもあるのかもしれない。お母さんに「何か委員になったら」なんて言われていたけれどとんでもない話だ。
正直学校に行くのもイヤなくらい私は内気で引込み思案な性格だ。
それに小さい頃から体が弱くて冬になれば何度も風邪をひいて学校を何日も休む。
低学年の頃は冬でもないのに熱を出して学校を休んだりして授業に次第についていけなくなった。
それが言い訳ではないけれど私は勉強もできない。
宿題もせずによく廊下に立たされる。
小さい頃から「おはじき」も下手だったし、「綾取り」もいまだに覚えられない。
しかも運動音痴で体育の授業もずる休みをするほどだ。
要するに何にもできない、私には何一つ取り柄がないのだ。
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