橋本妙子の回想

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 休み時間、校庭でみんなとボール遊びをするのも気が引けて仲間に寄らないでいた。そんな風だから友達なんて出来るはずもない。  同級生に「あの子と一緒に遊んでもあんまり面白くない」ともよく言われた。  三年生の三学期でようやく友達になりかけた子ともクラス替えで離れてしまった。 「四年生になっても友達でいようね」とお互いに言っていたけれど家も反対の方向だしどうやって会えばいいのかも分からなかったのでそれっきりになってしまった。向こうから連絡もない。  四年生になって今度こそ友達をつくろうと思ったけれど、そう簡単にできるものではない。  そんな時だった。教室の窓際に座って外を眺めている水野さんの存在に気がついたのは。  水野さんはクラスの子とは遊ばずに一線を画していつも自分の机で本を読んでいる。  そんなマイペースの水野さんを見て、なんて意志の強い人なんだろうと思った。  同じ女の子としてちょっと格好いいとも思っっていた。  私にはとても真似できない。  私は水野さんのような強さが欲しかった。  水野さんと友達になろう、次第に私は水野さんしか見なくなった。  だから今日は最高のチャンスだ。  何てたって水野さんの隣に座ることになったからだ。  けれど水野さんは何かを気にしているようだ。  バスの席でお尻をもぞもぞと動かして私との距離を遠ざけようとしている。  こんなに狭い空間で何をしているのだろう?  でもそれはすぐにわかった。水野さんは自分の匂いを気にしているんだ。  前にクラスの誰かが「あの子、臭いわ」と言っていたのを思い出した。  私はそんなに匂うとも思わないけれど、女の子なのだから本人にとっては深刻な問題なのだろう。
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