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「あの話、よだかって鳥、可哀想だよね」
「そうでしょ、今でもよだかの星は空で燃えているんだよ」
「本当なの?」
「私の心の中にだけなんだけど。夜になると私には空を眺めると見えるのよ」
本の話をする水野さんはとても生き生きとしている。
何か夢中になるものがある人って羨ましい。
水野さんは運動神経はいい。逆上がりだってできたし、跳び箱も私より数段高くても飛べていた。成績も上位クラスだ。
水野さんはそんな私のことをどう思うのだろう?
でも、そんなことはもうどうでもいい。
水野さんといるとすごく安心できる。まるで暖かな春に包まれているように感じる。
水野さんとまだ話し始めてそれほど経っていないのにそう感じる。
けれど、何ヶ月も一緒にいても親しくなれない人だっている。
「ねえ。バスから降りたら、水野さんのこと。明美ちゃんって呼んでいい?」
私はそう自然と声に出していた。
「いいよ。だったら、私もこれから橋本さんのことを妙ちゃんって呼ぶ」
明美ちゃんは笑顔を浮かべた。
バスを降りるのがすごく楽しみになった。
「ねえ、橋本さん、こっちに来て一緒に遊ぼうよ!」
ラケットを持ったクラスの女の子たちが手を振っていた。
運動音痴の私にはバトミントンなんてちっとも楽しくない。仲間に加わってもまた邪魔者扱いされる。
それに私の心はもうとっくに決まっていた。
私は明美ちゃんと一緒にいるんだ。もっと明美ちゃんと話したい。
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