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けれど、私たちの仲はすぐに終りを告げた。
明美ちゃんが初めて家に遊びに来たその日の夜のことだった。
「妙子、今日、家に来ていた子、この子だろう」
お父さんはテーブルにクラスの連絡網の表をドンと置くと明美ちゃんの連絡先の箇所を人差し指で指した。
先生から連絡の矢印が伸びて明美ちゃんの家で止まっている箇所だ。明美ちゃんの家からはどこにも矢印が出ていない。
「そ、それがどうかしたの?」そんなのとっくに知っている。
「妙子はこの家がどんな家か知っているのか?」
「知っているわよ。貧乏なんでしょ!」
「ただの貧乏じゃない。母親がおかしな宗教に入信していて、この町では嫌われ者なんだ。あの家とつき合うとこの家まで同じように思われる」
「そんなの娘の明美ちゃんとは関係ないよ!」
「とにかくもう会うな!」お父さんは自分の言うことが聞けないのか!という勢いだ。
「私、絶対、お父さんの言うことなんて聞かないから!」
お父さんと喧嘩して後味が悪かったけれど、次の日曜日、明美ちゃんと駅で合わせをした。二人で隣町まで遊びに行くんだ。
「妙子!どこに行くっ」
玄関で靴を履いていると、お父さんが居間から出てきて大きな声で訊ねた。
「遊びに行くの」淡々と答える。
「誰とだっ!」
お父さんは最初から水野さんだと思っている。
「誰とだっていいでしょ!」
「あの子だろっ」
「あの子って何? 水野さんにはちゃんと苗字も名前もあるのよ」
「やっぱりそうじゃないか。この前に会うなと言ったばかりだろ!」
「お父さんなんて大嫌いっ!」
お父さんの平手打ちが飛んできた。
「きゃっ」私は反射的に顔を押える。
そんなっ、どうしてそこまでされなくちゃならないのっ。平手打ちは当たらなかったけれどお父さんにそんなことをされるのはショックだ。
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