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「なんでぶつのよっ、明美ちゃんはやっとできた私のたった一人の友達なんだよっ。それなのにぶつなんてひどいよ!」
私は玄関で外に出られないままその場で泣き続けた。
こんな顔で明美ちゃんとは会えないよ。
「とにかく今日は家を出るな。あんな子、縁起が悪くてしょうがない」
お父さんは玄関先に立ち塞がった。
明日、学校に行って駅に行けなかったことを説明しよう。明美ちゃんならきっとわかってくれるはずだ。
けれど、次の日、明美ちゃんは私のことを「妙ちゃん」と言わずに「橋本さん」と呼んだ。そして「私、他に友達ができたの」と言われた。
そんなの嘘に決まってる。明美ちゃんの顔を見ればわかるよ。
それから学校でいくら明美ちゃんに声をかけても返事をしてくれなかった。
お父さんに「明美ちゃんに何か言ったのっ」と訊いても「妙子は何も知らなくていい」と誤魔化された。
季節は過ぎて行ったけれど明美ちゃんは絶対に私とは話してくれなかった。
きっと明美ちゃんはお父さんに何か言われたはずだ。
明美ちゃんはお父さんに言われたことを忠実に守っている。
そんな明美ちゃんはすごく悲しい子だと思う。お父さんに言われても、そんな事は無視して私と話してくれればいいのに。内緒にしていればわからないのに。
辛かったけれど、明美ちゃんは私とは違ってすごく意志の強い子なんだと思った。
皮肉なものだ。明美ちゃんの意思の強さに惹かれて友達になろうと思ったのに。
もう私にはどうすることもできなかった。
私は弱い子だ。
そして明美ちゃんと話すこともできないまま私は小学五年生になった。
明美ちゃんとはクラスが別々になってしまった。
これでもう本当に明美ちゃんとお別れなんだと思うと悲しくてクラス替えのあったその日、私はお布団の中で一晩中泣いた。
明美ちゃん以外誰とも話したくない・・そんな日が続いた。
新しいクラスにも中々馴染めずに一学期を過ごした。
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