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「橋本さん、ダメかな?」
「いいよ。伊藤さん」
私は伊藤さんに笑顔を見せた。久しぶりにクラスメイトに見せた笑顔だ。
「橋本さん、本当にいいの?」
念を押すように伊藤さんが訊ねる。
「伊藤さん、明日から給食を一緒に食べようよ」
うん、うんと伊藤さんは嬉しそうに頷いた。
「あ、ありがとう。それで、私、芦田さんの話は芦田さんの友達の石谷さんに言おうと思ってるの」伊藤さんは続けてそうアイデアを出した。
「それはいい考えだと思うわ。私が芦田さんに言っても話を聞いてなかったし」
私はようやく自分の居場所を見つけた気がした。伊藤さんも同じ気持ちだったと思う。
伊藤さんは芦田さんのイジメのことを石谷さんに全部話した。
その時、伊藤さんは石谷さんに「大事な人は一人でいい」と言ったそうだ。
その言葉は伊藤さんにとっては私とちゃんとした友達になったという証のような言葉なのだと理解した。
けれど、その言葉は私にとっては明美ちゃんとの決別の言葉だった。
せっかく伊藤さんが友達は一人でいい、ということを言ってくれているのだから、もう水野さんのことを思うわけにはいかない。
もう過ぎ去ったことを思うわけにはいかない。
明美ちゃんのことは早く忘れよう。
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