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日曜日、伊藤さんに家に遊びに来てもらった。
以前、明美ちゃんを家に呼んだことがあるのだから伊藤さんを呼ばないわけにはいかない。お父さんは伊藤さんを見てどんな反応を示すのだろう。
明美ちゃんが来たその日の夜にお父さんは「明美ちゃんと会うな」と私を叱りつけた。
ここでまた私は明美ちゃんのことを思い出した。何かのきっかけですぐに明美ちゃんのこと思い出す。
明美ちゃんのことは早く忘れようと思っているのに。
「伊藤さん、私の家は結構貧乏なのよ。お父さんの会社は倒産したし、そのせいでお小遣いも少なくなったの」
私のお父さんが仕事が上手くいかず、更に借金に負われているのも知っている。
「あら、橋本さん、私の家も貧乏よ。お小遣いは当分上がりそうにないわ」
伊藤さんも同じように私に合わせて言ったけれど人の家のことだ。比べようもない。
「伊藤さんは普段は何をしているの?」
「家では弟の面倒を見ているの。弟はまだ一年生なの、勉強を教えたり、ドッジボールで遊んであげたりしてしているわ」
伊藤さんは明美ちゃんみたいに本を読むのかな?
「へえ、伊藤さんには弟がいるんだ」
「弟って、結構面倒なものよ。どうせならお兄さんがいた方がよかったなあ」
伊藤さんには隠し事はいけないと思って明美ちゃんの話もした。
「ふーん。橋本さんのお父さんって結構厳しいんだね。私のお父さんだったら、そんなことは言わないだろうな」
「いいなあ・・」
私は今でもお父さんが明美ちゃんを拒否したことを恨みに思っている。
「だってさあ。橋本さんのお父さんにはちょっと失礼な言い方かもしれないけど、人の事をとやかく言う前に自分がそんなに偉いのかって思うのよね」
確かにお父さんには失礼だけど、伊藤さんの言うことはすごく当たってる。
それに水野さんはお父さんがいなくて、お母さんと二人きりで生活するのも大変なんだ。
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