銀河鉄道の乗車切符

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 そして、その後も夢は続く。  寝ていると私の布団が風で吹き飛ばされ、体全体に冷たい風が当たってずっと震えている夢だ。ただ寒いだけの何の意味もない夢だ。  目が覚めるともっと寒いことに気づく。  それは私の家が隙間だらけで色んな所から冬の冷たい風が入ってくるせいだ。  毎晩、私は薄っぺらい布団の中で体を丸めて縮こまり少しでも体を温めようとする。  母は私がそうしているのを見つけるとすぐに自分の布団を私の方にかけてくれる。  私が小さかった頃から母はそうしてくれた。それは今も変わらない。  私のことを悪魔と呼んだりしている今もそれは変わらない。  だから私は冬の夜のこんな時間が好きだった。  薄い布団の上にずんと布団が上に載せられる瞬間、どんな寒さも我慢できる気がする。  けれど自分の布団を私にかけるのを毎晩繰り返しているうちに母は風邪をひいてしまう。 「お母さん、大丈夫?」  深い咳を何度も繰り返す母に問いかける。  風邪をひいても保険などには入っていないからお医者さんにかかることすらできない。  母は一言「あっち!」と言って指を自分がいる方と反対側を指す。  風邪がうつるから自分に近づくなと言いたいのだ。  けれどこんな狭い部屋ではどこにいても母の風邪はうつる。  私が働くようになったらここを引っ越して母に楽をさせてあげよう。
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