銀河鉄道の乗車切符

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◇ 「お母さん、私も警察に行くよ!」  私は山中くんから聞いた話を母に話した。  母は私の言葉を疑っているような表情をしていたので「嘘だと思うんだったら、山中くんに訊いてみてよ」と続けて言った。 「明美は盗った男たちの顔を見てるんだね」  母の反応は予想外だ。商品を取られた直後とは違って積極的に私の話に乗ってきた気がした。 「私だけじゃないよ、山中くんのお母さんも見てるよ。証人になってもかまわないって言ってくれてる」  山中くんのお母さんは本当のお母さんじゃないらしいけど、いいお母さんだ。 「私は一体何をしているんだろう・・」  母はそう小さく呟いた。  母と私は警察に行き、事情を説明した。  大変だったのはその後だ。母の売っていた商品について色々と調べられることになり盗んだ男たちについてよりも商品の調査の方に時間が割かれた。  怖い顔の人が応対してまるでこちら側が犯罪者のような気分になる。  商品の販売元の人も呼ばれ事情を聴取されることになって大事になってしまった。  私の横で「えらいことになってしもうた」と顔色を変えて母は呟いている。  母は私の言葉に慌てて警察に駆け込んでしまったのでここまで商品について捜査されるとは思ってもみなかったのだ。  最初は商品を取り戻せるのでは、と張り切っていた母も疲れきったようだった。  しかし、販売元の人が現れると商品の調査は終りを告げたらしく今度は盗んだ男たちのした行為について訊かれることになった。  母は私から訊いた「タナカ」や「ヨシダ」という男たちの名前や住所を書いたりした。  他にも何人か男がいた。私は名前は聞いていないけれど母にはわかるらしい。
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