銀河鉄道の乗車切符

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 憑き物が落ちた、というのはこういうことを言うのだろうか?  あとで商品の販売元に母が何を言われたのかは私は知らないけれど、母は力尽きたようになって「早く家に帰りたい」とぽつりと言った。  母に「商品が戻ってきたら、また売れるね」と励ますように言うと「もうええ、あんなもん」と返された。  だったら、これからどうするんだろう?  しばらくして商品はもう戻ってくることはないということがわかった。  男たちのしたことについて母は何度も警察に訊かれたりした上に、警察の人に「商品の性質上、人に恨まれても仕方ないな」というようなことも言われたらしい。  男たちはこの件に関してはたいした罪に問われることはないそうだけど、その男たちは別の事件について捜査されていることがわかった。  会社に上手い話を持ちかけて別の金融会社にお金を借りさせたあとその会社を倒産させて借金の肩代わりにその会社の商品を奪っていくという詐欺事件だ。  すでに数件の会社が詐欺に引っかかりこの男たちによって潰されているそうだ。  男たちはこのやり方で何百万円も儲けているらしかった。  母の場合は犯人の男たちは母に騙されて商品を買うふりをして後で家に来て商品を大量に持って帰りどこかで売りさばいていたということだ。  母は詐欺のような商法で商品を売っていたので警察に駆け込むこともないと男たちは踏んでいたのだ。  だから母の商品はもう戻ってくることはない。  上手い話を持ちかける会社と金融会社が繋がってグルになっているという証拠が掴めなかったところに母の商品の窃盗事件が上がってきたので警察は捜査を進め易くなったらしい。  なぜなら私の見た男たちの中に詐欺のグルの男たちの両方がいたからだ。  そして詐欺に関わった男たちの名前の中に私のよく知っている名前があった。  その名前は「沢井」。  絶対に忘れたりしない。私に万引きをさせた女の子。  あの沢井さんの父親の名前だ。
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