第六章 賢者と死体

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第六章 賢者と死体

~東の洞窟にて~ せっかくみるるが買い与えたシャツの背中をびりびりにして、すじばった羽がフラルの背中からのぞいている。 骨にちりちりにやけた羽をまばらにさしたような、いびつなフラルの翼はぎちぎちと成長でもするような音をたてて蠢いた。 「…はあ」 フラルが息をつくと、翼は一瞬静電気をまとった。 「じゃあ、ちょっと取ってくるよ」 いびつなつばさを思いっきり羽ばたかせて、フラルはあっという間に飛んで行った。 「ちょっと…まじ?あれ…悪魔??」 みるるは頬を笑わせながら王さまに訊く。 「だから最初から自分でそう言っておるだろーが」 みるるは目をしばたかせた。 「ちょっとまってよ。僕たちあの領内ではお尋ね者なんだよ?フラル一人で行かせて、もし兵士に襲われでもしたら、大変なことに…」 かっ、と。 大きな火柱がさっきのみるる達が投獄されていた辺りから吹き上がる。 紅蓮の炎は思いのままに天を焼き焦がし、悦びの咆吼をあげていた。 「は、はは…」 その火柱の中心辺りから小さな人影が飛んでくる。 みるるの剣を抱えたフラルであった。 「ありゃあ、国一つ滅んだな」 のんびりとあくびをしながら王さまが言う。 「みるる!剣とってきたよ?ねえ!俺えらい?俺有能?」 大型犬の様につぶらな瞳をしてみるるに飛び寄ってくるフラルを、みるるはフラルが持ってきた剣を奪って殴った。 「い、痛いよみるる~!」 「おまえの存在よりはイタくねえよ!どうしてくれんだ、あんなでかい爆発起こしやがって…」 みるるはまだ紅く染まっている空を見る。 「大丈夫じゃろう。おそらく皆地下シェルターに逃げ込んでおるはずじゃ」 王さまが手を額に当てて遠くを望み言った。 「んなこと言ったって…フラルの面は割れてるだろうし…よし!」 みるるは剣を腰に帯びて、くるりと洞窟に向き直る。 「鬼退治だ!」 ずんずんと洞窟の中に入っていった。 「あ、なかったことにするのね。…待ってよー!」 その後をいつのまにかジーパンまで吹っ飛んでいて全身タイツ姿のフラルがついていった。 王さまも、また。
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