第六章 賢者と死体

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「『アルベルト』」 みるるは剣を抜く。 三人の視線が、闇の中を油断なく交錯した。 「………」 それが見えた、と思った瞬間には。 それは足音もなくみるる達の前まで駆け上がってきた。 「鬼…かぁっ!」 みるるの喉に噛みつこうとした獣をみるるは剣で受け止める。 獣の生臭い息がみるるの顔にかかる。 「この…やろっ!」 みるるは力で剣を押し切り、獣を地に叩き伏せた。 獣はばっと後ろに飛び、みるる達から距離をとった。 「…ねえ、王さま、今の…見た?」 フラルが獣に懐中電灯のまるい明かりを向け、ぽかんとして言った。 「…ああ。間違いない。あれは…どこかの魔術師の、使い魔だ」 明かりに浮かび上がった獣の胸元にある、何かを肉ごとむしりとった跡。 あそこにはおそらく魔術師本人によって刻まれた、仕える悪魔の紋章があったのだろう。 「でも…普通、チンパンジーを使い魔にする?」 フラルが言った。 そう、みるる達が戦っていたのは、今をときめくチンパンジーだった。 「今をときめいているかどうかはさておき、使い魔ってことは、誰か操ってる魔術師がいるって事だよな?じゃあ…その魔術師をたおせばいいんだな?」 うーん、と王さまはそう言うみるるに向かって唸る。 「どうやら事はそんなに、簡単ではないようだ」 王さまはすっと手を伸ばす。 伸ばした指先にぽうっと光の玉が宿り、それはふわふわと綿毛のように王さまの指から離れた。 「ほら」 そしてその蛍のような魔法の光は、みるるのすぐ横に留まり、一つの死体を浮かびあがらせた。
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