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第七章 エプシア
~東の洞窟の内部にて~
ごきごき、と茶色の上等の司祭服をまとった青年は首を鳴らした。
「助かったよ。いやあ、一時はどうなることかと」
へらへらと大賢者の称号を持つ魔術師は笑う。
実は大賢者と呼ばれるような魔力の高い人間の血を全部吸った使い魔なんて、この辺りの人間皆殺しにしてさらにイタリア中を血の海にして少なくとも天使軍呼び出すぐらいはしたであろう大物だった事は、清散華も王さまも黙っていた。
「まあ、無事に何事もなく片づけられてよかったよ。さあ、金貨だ金貨だ♪」
スキップをしながらみるるは洞窟を出ていこうとする。
「そういえばみるる、ノルウェイ金貨なんて何に使うの?」
フラルが訊く。と、みるるは硬直した。
「…教えねえよ。だって、言えばおまえら、絶対笑うし…」
珍しく恥ずかしそうにみるるが俯いた。
「笑わないよ。教えてよ」
フラルがみるるの顔をのぞき込む。
ち、とみるるは舌打ちした。
「土地をよ、買うんだよ。そして…」
「あっはっはっは!」
王さまが大笑いする。フラルは迷わず王さまの鳩尾に下突きを入れた。
「ごほっ…いや、やっておかねばならないかと…」
「真面目な話してんだよジジイ。ちっと黙ってろ」
ぺっと吐き捨てるフラルにふと王さまは悪魔の本性を見る。
「それで?」
フラルはみるるに向き直る。
みるるはもう一度舌打ちをした。
「国を、造るんだ」
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