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第八章 ベリ○ルと猿
~まだ東の洞窟にて~
「ちょ、ちょっとまってくれ。あんた、大賢者なんだよな?」
みるるが清散華に訊く。
「そうだよ」
「んで、王さまも賢者なんだよな?」
王さまも頷いた。
「うーん・・・一つの国に、賢者が二人も・・・まあ、いいか・・・。で、清散華、あんた国民になりたいんだな?」
「ああ」
「・・・何かできることはある?」
清散華は考え込む。
「はいはいっ!みるる、俺農作業できる!」
みるるはフラルに満面の笑みを浮かべて頷いた。
「合格」
「はいはいっ!わし枝落としできる!」
みるるは妙な顔をして王さまに頷く。枝落しとは、杉を育てるときに下のほうの枝を木に登って切り落とす技である。どこかの島国はそれの後継者不足に悩んでいる。
「妙なことできるんだな・・・合格」
「・・・はい」
清散華がそろそろと手をあげた。
「僕は、錬金術をちょっと・・・」
「だめ」
「じゃあ、招喚神術・・・」
「駄目。なんでそんなすごいことできるのにわざわざエプシアなんかに・・・」
「嫌になったんだよ。悪魔と契約できた珍しい『人間』という見世物として、学会に出るのも、どこかの王侯貴族が戦争のために僕の力を利用しようとして、金を持って訪ねてくるのを追い払うのにも・・・。う゛―、あ゛―、キメラ・・・つくれるよ」
「あのなあ・・・」
みるるがこめかみを押さえながら頭を左右させると、王さまが発言した。
「清散華、確か君医術出来たろ?それでいいのではないか?」
「え?だって僕外科と内科と整形外科と脳外科と整体と歯科と婦人科と耳鼻口喉科しかできないよ?」
思わずみるるは清散華の顔に剣の柄をぐりぐりと押し付けた。
「はああい合格~!そんだけできたら十分だ!っていうか凡人への嫌みかオイ。出来ねえもの無えじゃねえか」
みるるは更に青筋を浮かべながら清散華に剣を押し付ける。
「小児科はできないんだよ」
抜刀しそうになるみるるを王さまとフラルが二人がかりで抑えた。
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