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こうして、俺は黒川くんと一緒に住むことになった。
俺の家に連れて来た時「ほ、本当にここに住んでいいんですか?」とか「俺なんかが、贅沢だ」と慌ててみせた。
「どこにでもあるタワーマンションだよ。それでも、君が喜んでくれたなら嬉しい」
俺がそう言うと、黒川くんはじっとりと見た。
「黒川くん、どうしたんだ。そんなにジッと見て」
「……誰にでも、そんなふうに言ってるんだろうなって、思ってました」
「そ、そんなことないぞ! 俺は、元カノにだってそんなこと……」
そこまで言ってハッとする。元カノの話だなんていまさらしても仕方ないのに。
「元カノ……?」
「ああ、ずいぶん前に別れたんだよ」
黒川くんは俺の言葉を聞いても不服そうだった。
「彼女とは……長く付き合っていたんだけど振られたんだ」
窓の傍に立つ黒川くんを抱き寄せる。
黒川くんの肩越しに見える風景は、遠くまで見渡せて清々しい。けれどいつもどこか心を寂しくさせた。でも、今は黒川くんを抱きしめているから胸が温かい。
「“一緒にいてもつまらない”とか“いつもつまらなさそうな顔をしてる”とか“人間じゃないみたい”なんて言われたな……。でもどれもあながち間違ってないだろう? 昔から言われてたんだ。冷酷だとか、表情が読めないって」
「そ、そんなことないです……」
黒川くんは俺に素直に抱かれている。
そのまま、俺の腕に頭を擦りつけた。
「唯史さんは、わかりやすい、ですよ」
そんなこと、初めて言われた。
「だって、出会った時も俺が冷蔵庫を倒しかけて、助けてくれたじゃないですか。あの時の、必死な顔、忘れません」
そんな必死な顔してたか……。
「そ、それに、ショットバーでも助けてくれようとしました! ……勘違いでしたけど」
黒川くんの声は少し笑っているようだった。
あの時のことは今思い出しても顔から火が出るほど恥ずかしい。
黒川くんはそのまま俺を見上げる。
「あ、あと、個人的にですけど、セックスしているときの顔も好きです。俺のこと、大事にしてくれてるんだって感じました。キスも……」
「お、起きてたのか……!」
黒川くんは照れながら「はい」とはにかんだ。
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