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「汚れてもいいよ。どうせこの後は帰るだけだし、それにキャスターがついててもエントランスの入り口には階段が二、三段あるだろ。入り口まで手伝うよ」
「あ、ありがとう、ございます」
青年と一緒に冷蔵庫を運ぶ。
時折、青年が力を入れて「んっ」と出す声が妙に色っぽくて、男だとわかってもドキリとしてしまった。
「運んでもらって、ありがとう、ございました」
階段から下ろした後、青年はぎこちなく口元を緩めて言った。
「いや、いいんだよ。じゃあ、頑張って」
俺はスーツについた埃なんかを払う。
青年は何度も会釈をするとトラックのほうへ走って行ってしまった。
その会釈するために足を止める仕草が、構ってほしそうな野良猫みたいで苦笑してしまった。
帰宅して、汚れたスーツを脱ぎ、シャワーを浴びる。
髪を洗いながら目を閉じると、青年のことを思い出してしまう。
白い首筋とか、ウエスト部分を絞ったデザインになっているつなぎから簡単に想像できる細い腰のくびれとか。
「俺、何考えてるんだ……」
彼女に振られたショックで頭がおかしくなっているのだろうか。
青年のことを思うと下半身が淡く反応してしまう。
彼の「んっ」という声を思い出すとジクリとした熱が宿り、ゆっくりと自身が持ち上がっていく。
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