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第1話 煉獄
目を覚ますと、見知らぬ天井が目に飛び込んで来た。
「・・・?」
冷静にその人物は、自分が置かれている状況を把握しようした。
まず、自分がベッドに寝かされている事。
ここが見知らぬ部屋であるという事。
そして、身体に痛みを感じず、動く事も可能である事がわかった。
ベッドから抜け出し、部屋を見回す。
豪華なシャンデリアの吊り下げられた天井。
広い部屋。高級そうな家具たち。ふかふかの絨毯。
ちなみに先程まで寝ていたベッドはキングサイズだった。
どこかのホテルのスイートルームか金持ちの屋敷なのかもしれない。
そう考えていた時、ふいにドアをノックする音が聞こえた。
距離をとって、身構える。
「失礼いたします。」
ドアが開き、そこから燕尾服を着た男が入って来た。
知らない人物だった。
黒髪をオールバックに纏めた長身の男。歳は40代くらいだろうか。彫りの深い顔立ちとグレーの瞳が特徴的だ。
どう見ても日本人ではなかった。
そのわりには、流暢な日本語で話かけてくる。
「おはようございます。今日はいい天気ですよ。」
男はそう言って、つかつかと壁に歩いていく。
「そうですね・・・。ここがよろしいでしょうか。」
そう呟くように言い、壁をコンコンとノックした。
するとボンッ!!という音と白い煙が上がり、大きな窓と赤いカーテンが現れた。
「!!?」
流石に冷静を保っていた人物も驚かざるをえなかった。
マジックの類だろうか。
今度は目の前にふわふわと何かが飛んできて、さっと後ずさりをしてしまった。
「おやおや、そう警戒せずとも。それとも紅茶はお嫌いですか?」
男がくすくすと笑いながら言った。
改めて確認すると、それはティーカップだった。
中には湯気の立ったオレンジ色の液体が入っている。香からして紅茶なのは確かだ。
(・・・危ないものもないな。)
「・・・いただきます。」
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