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「…うお……。」
龍紀があっけにとられていると、アルフォンスが肩をすくめる。
「貴方ねぇ…野蛮ですよ。その鈍器をホテル内に持ち込むなと、何度言わせるのですか?」
「鈍器なんて言い方、やめてちょうだい。そんな野蛮な物と一緒にしないで。」
ジェニフェールが何かを肩に担ぎ直す。
それを降り下ろして、テーブルを壊したのは明らか。
龍紀はそれが何か、すぐにわかった。
「それ…モーニングスター?」
「あら、貴方わかってるじゃない。」
ジェニフェールが嬉しそうに言った。
右手の鈍器を軽々と回してから、龍紀に見せつける。
棒の先にある球体に、針ネズミのようにいくつもの刺がついている。
「これが私の相棒よ。モーニングスターの【アンジェ】。」
「へぇ…。って、何でそれを持ち歩いているんですか?」
天使であり美女であるジェニフェールには、似つかわしくない。
そう思って質問したが、それにジェニフェールの方はきょとんとしていた。
「何でって…管理人だし。え?聞いてないの?」
「えっと…聞いてないのって?」
「管理人の仕事について…だけど…え?ちょっと、うん…まず確認させて。貴方管理人ってものについてどこまで聞いてるの?」
「…この世界と魂の管理で、死んだ人の魂や、肉体から離れた魂を保護するとか?」
「まぁ、合ってはいるけど…。」
先程までの怒りようはどこへやら。ジェニフェールは水でもかけられたような気分だった。
龍紀はその様子に、小首を傾げる。
「…あんた、ちゃんと説明してないわね?」
アルフォンスが、コーヒーを飲む手を止めた。
「…していないのではなく、忘れておりました。」
「大事なとこでしょ!?あり得ないわ!」
「その点については、非を認めます。あとで説明しておきますよ。」
「絶対よ。貴方のせいで、女の身体に傷がつく事になったら、私は貴方の頭蓋骨砕くから。」
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