34人が本棚に入れています
本棚に追加
龍紀が聞き返すと、アルフォンスは静かに頷いた。
「魂を回収する時や、輸送時に襲われる事はしばしばあります。先程魂狩りと言ったのを覚えていますか?」
「うん、まぁ。もしかして…魂が盗まれるのか?」
「そうです。」
アルフォンスが説明をはじめた。
「魂には様々な価値があります。金にも食料にもなり、そしてランクの高い魂は、力を得られるのです。欲しがるものは多いでしょう。貴方は魂であり、管理人であるのです。狙われる事になるでしょうね。」
「でも俺は回収も輸送もしないだろ?記憶係だし。危険はないんじゃないのか?」
「いいえ、十分危険なのです。…理由は2つ。1つは、先程言った魂狩りですが…最近過激になっております。いつ、どんな状況で襲ってくるかわかりません。2つは貴方の仕事となる記憶係は、安全な仕事ではないからです。それはまた説明いたしましょう。店を出ましょうか。」
「あ、うん。でもいいのか?テーブルが割れたし店の人に…え!?」
龍紀の目が驚きで丸くなった。
ジェニフェールによって、真っ二つに破壊された木製のテーブルが、壊れる前の状態で、何事もなかったかのように存在していた。
「今気づいたのですか?」
「アルが直したのか?」
「そんな面倒な事はしませんよ。このランプのおかげです。」
アルフォンスが頭上に輝くランプを指差した。
エメラルドグリーンのランプが、ゆらゆらと揺れながら2人を照らしている。
何のへんてつもなさそうな、綺麗なランプである。
「魔法の込められたガラスで出来ているのですよ。熱を受ける事で魔法の力を発揮し、ガラスの出す光を受けるものにだけ、魔法の効果を与えます。例えば、防音や壊れた物の修復等ですかね。」
「へぇ…。すごいな。あ、だからここ勧めたのか?防音なら、仕事の話もしやすい。」
「そうです。それに、ジェニフェールが短気になって暴れたとしても、ここなら人の迷惑にはなりにくいでしょう?」
アルフォンスの言った通り、ジェニフェールが大声を出したり、テーブルを壊したりした時に、店員が注意に来る事も、他の客が迷惑そうにする様子がなかった。
それもこのランプのおかげなのだろう。
「では、行きますか。回復したばかりの貴方には申し訳ないのですが、仕事をお教えしなくては。」
「あぁ、大丈夫。早く覚えないとな。」
2人は会計を済ませ、店を出た。
最初のコメントを投稿しよう!