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2人がエレベーターで移動している時、ジェニフェールはホテルを出たところであった。
ホテル上空を飛び、優雅に純白の羽根を羽ばたかせている。
「…にしても。」
ジェニフェールは1人考え込む。
先程まで、自分に余計な仕事を押し付けてきた輸送課や、気にくわないアルフォンスの愚痴を1人ぼやいていたのだ。
「あの子…どこかで見た事あったかしら?」
アルフォンスと一緒にいた、新しい管理人の男装少女。
ジェニフェールは見ただけで、その者の正体がわかる特殊な目を持っていた。
それは、魔法の力等ではなく、今まで生きてきた中で培ってきた能力。
そんなジェニフェールには、あの少女に,はじめて会ったようには思えなかった。
「どこだったかしら?」
首を傾げながら、ううん?と考え込む。
「…本当に最近見たような…気…が、するのだけれど……?」
少女の顔を思い出す。
黒髪に、色素の薄い瞳。確か茶色だった。
どこで見かけたのだろう。
そうだ、魂を回収している時に見たのかもしれない。いや、自分の担当に少女はいなかった。それとも生前に少女と会ったのだろうか。
それも可笑しい。
ジェニフェールが死んだのは、数十年も昔なのだから。
「いいえ、そうじゃないわ…それならすぐわかるもの……だって…。」
空のように澄んだ瞳を、刃物のように鋭く輝かせる。
飢えた獣のような、獰猛で欲の孕んだ瞳は,天使のものとは思えなかった。
ジェニフェールは舌舐めずりし、恍惚とした表情を浮かべる。
「あんなに美味しそうな魂なんだもの。」
ジェニフェールの瞳に映る少女は、まさに極上の獲物だった。
これはジェニフェールが天使になってから得た能力だが、見ただけで魂のランクがはっきりとわかるのだ。
「最高級のそれも激レア魂……白い魂…。あんなに満身創痍なのに、輝きを失っていないなんて…本当にラッキーね!」
ジェニフェールはくるくると飛び回りながら、歓声をあげている。
(まだ記憶が揃っていないだろうけど、完全に戻ったらさらにあの子は輝きを増すわ。そこを美味しくいただこうかしらね。)
そう企むジェニフェールの笑顔は、恐ろしいというよりも、妖美で綺麗に見えた。
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