第2話 妖美な天使

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2人がエレベーターで移動している時、ジェニフェールはホテルを出たところであった。 ホテル上空を飛び、優雅に純白の羽根を羽ばたかせている。 「…にしても。」 ジェニフェールは1人考え込む。 先程まで、自分に余計な仕事を押し付けてきた輸送課や、気にくわないアルフォンスの愚痴を1人ぼやいていたのだ。 「あの子…どこかで見た事あったかしら?」 アルフォンスと一緒にいた、新しい管理人の男装少女。 ジェニフェールは見ただけで、その者の正体がわかる特殊な目を持っていた。 それは、魔法の力等ではなく、今まで生きてきた中で培ってきた能力。 そんなジェニフェールには、あの少女に,はじめて会ったようには思えなかった。 「どこだったかしら?」 首を傾げながら、ううん?と考え込む。 「…本当に最近見たような…気…が、するのだけれど……?」 少女の顔を思い出す。 黒髪に、色素の薄い瞳。確か茶色だった。 どこで見かけたのだろう。 そうだ、魂を回収している時に見たのかもしれない。いや、自分の担当に少女はいなかった。それとも生前に少女と会ったのだろうか。 それも可笑しい。 ジェニフェールが死んだのは、数十年も昔なのだから。 「いいえ、そうじゃないわ…それならすぐわかるもの……だって…。」 空のように澄んだ瞳を、刃物のように鋭く輝かせる。 飢えた獣のような、獰猛で欲の孕んだ瞳は,天使のものとは思えなかった。 ジェニフェールは舌舐めずりし、恍惚とした表情を浮かべる。 「あんなに美味しそうな魂なんだもの。」 ジェニフェールの瞳に映る少女は、まさに極上の獲物だった。 これはジェニフェールが天使になってから得た能力だが、見ただけで魂のランクがはっきりとわかるのだ。 「最高級のそれも激レア魂……白い魂…。あんなに満身創痍なのに、輝きを失っていないなんて…本当にラッキーね!」 ジェニフェールはくるくると飛び回りながら、歓声をあげている。 (まだ記憶が揃っていないだろうけど、完全に戻ったらさらにあの子は輝きを増すわ。そこを美味しくいただこうかしらね。) そう企むジェニフェールの笑顔は、恐ろしいというよりも、妖美で綺麗に見えた。
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